長崎〜大分 回航航海日誌  《さらく》 1999/8/19〜22
17日に大分から長崎へもどりヨットをチェック。2ヶ月間ほとんど動かしていなかったため、ペラに海草など付着。また、船底の栓を抜いてアナログ速度計を入れたところ完全に入りきらず水漏れが止まらない。二月に上架したときに船底塗料を穴の中まで塗ったのはいいが量が多すぎたせいではないか。
やむを得ず18日に上架して整備することにした。ペラは付着物を落としてから今回もペラクリンを塗ってもらった。ついでにジンクも変えたが、業者から届くのが遅れたことや、取り付けに手間取り、下架したのは午後七時半。それからテスト運転して異常がないことを確認した。
近くのスーパーで蛍の光を聞きながら買い出し。空家になっている長崎の自宅のことなども考えなければならず、暑さも加わって頭の中はパニック状態。
8月19日午前5時半 長崎サンセトマリーナ出航 晴れ

セールはあげたものの2メートルから4メートルの風、機帆走。西彼杵半島の海岸線に沿って走っていると、寄ったことがある港の沖を通りなつかしい。緑が多く静かな港が多い。
南西の風なのでアビームからクオータリーで走れるが、波が少しあるうえすぐ風が落ちるのでセールがバタつく。池島の東側あたりから「あご」(飛魚)の飛翔を見かけるようになる。
あごの尾びれは下側のものが長く、それで水面をたたきながら飛ぶ距離を伸ばすと聞いていたが、なるほどそのとうりだ
佐世保沖で出航していく自衛艦二隻を見る。船首の番号から新鋭艦らしいが、最近は長崎港でも自衛艦をよく見かけるようになった。
平戸瀬戸に入ると収束するためか風が5メートルまであがり快調に走る。しばしエンジンを止めて、東南アジアから来ていた古の帆船乗り達を想像する。彼らの平戸港への出入りは南側の瀬戸を通過していたにちがいない。潮流と風に頼る帆船にはそれが一番適していただろう。
14時半平戸港着。三つあるポンツーンのうち、真中の一番古いポンツーンにつけた。漁船もつけているが、そこなら大丈夫と言われる。
日本に来た最初のイギリス人であり、航海士にして旗本、そして貿易商でもあったウイリアム・アダムスの墓がこの港町にはある。2年もかけて日本にたどり着き、その能力と知識をかわれて江戸幕府にとり立てられながらも独立して再び海へ出ていった彼の人生には感動する。
ホテルの露天風呂に入り、あごの干物を買って食べる。こいつは焼きすぎてはいけない、あぶる程度がうまい。
平戸は来年の日蘭友好400年に賭けている。町並をきれいにしているし、新しい観光船用ポンツーンもつくった。夜は平戸城がライトアップされる。漁師情報だが、ヨットで来る時は市の観光課あるいは観光協会に問い合わせれば停泊場所を教えてくれる手筈になっているという。
平戸島とビール缶 三浦安針の墓
玄海灘の夜明け 平戸港 中央にさらくのマスト
8月20日午前5時半出航 未明に雨、日中は晴れ

起きてみるとティーシャツでは寒いので合羽を着る。潮が引いている時間で、港を出ると南流れがありオートヘルムでは針路がコントロールできない。流れがなくなる所までティラーを握る。今日のコースは最短距離の呼子寄りを通らず、馬渡島(まだらじま)沖を通ることにした。疲れているので、少々居眠りしても大丈夫そうなコースにした。八時半ごろになるとさすがに暑くなってきて合羽を脱いだ。
壱岐を左手に見ながら行くと、右手からフェリーがあらわれた。呼子から壱岐へ向かう船だ。仕事で壱岐へ往復した時、悪天候で飛行機が飛ばない際に何回も乗った船だ。
烏帽子島の近くで潜航版に付けたルアを流すと、すぐに魚がかかった。40〜50センチのシイラらしいが、子供のせいか特有の頭の丸みがない。刺身包丁を持ってきた甲斐があった。きざんだネギをのせて食べたら美味しかった。
北西の風2〜3メートル、追い風なのでたまらなく暑く頭がボーとしてくる。快調だったオートヘルムがおかしくなる。暑さのせいではないかと、濡れたタオルをかけて30分ほどスイッチを切っておいてから入れるとまた働き始めてホッとした。予備機が壊れているので、なんとかしなくてはと前から思っていた。機帆走だが、ほとんどエンジンで走った。
16時40分、福岡県大島港の漁協給油所前に接岸。20リットルを補給。漁港はスペースがないのでフェリー桟橋に舫った。フェリーが接岸するのは反対側なので大丈夫。
風呂が町民センターとかにあると聞いていたので丘の上の建物まで歩いて行くと、火木土曜しかわかさないという。せっかく汗を流せると思ったのに、また汗をかいただけだった。
ヨットのシャワーを思いきりかぶってスッキリした。食堂などもまったく営業しておらず、船内でカレーを食べた。夜は涼しい風がほてった体をいたわってくれた。自販機で買った氷でウイスキーのオンザロックを楽しむことができた。燃料と氷以外は期待はずれの島だった。
明日の航程は70マイルくらいになる。GPSにウエイポイントを入力してから寝た。
8月21日午前3時半出航 晴れ

出航してから倉良瀬と地ノ島の中間点を目指した。その先で変針し関門海峡をめざす予定。夜明け前ではあるが島影はうっすらと見えた。しかしGPSが示す角度通りに進むと地ノ島にぶつかりそうだ。しかたがないので倉良瀬寄りにすすむことにした。内航船の航路になっているので、接近して来る船がないか注意しながら走った。しばらくして、ふと前を見るとすぐ近くに倉良瀬が見える。あわてて舵を切ったが50メートルくらいまで近づいていた。夜間航行は慣れていないので、距離感がおかしくなるらしい。
GPSの角度どうりに走ることができなかったのは、コンパスに問題があるのかもしれない。夜間には精度が問題になることを痛感。

明るくなってからセールアップ。南の風4〜5メートル、アビーム。エンジンを止めても7ノットで快調に走る。進行方向に日の出を迎えた。
馬島を目指していたのだが、近づいてみるといくつも島があってわかりにくかった。8時、関門第一ブイ通過。
海峡に入ると後方から数千トンクラスの本船二隻が迫ってきた。そのコース上に漁船一隻がいる。蛸壺を沈めている最中で、本船が汽笛を鳴らしても悠然と操業を続けた。
そのせいで本船がこちらに接近しはしないかと気が気ではなかったが、50メートルくらい離して追い抜いて行った。漁船はあいかわらず蛸壺を入れつづけていた。
下関港前には三角波が立っていて走りにくかった。連れ潮でスイスイ行けるとばかり思っていたので、これは意外だった。
関門橋をくぐってから、潮流がさらに速くなった。中潮でこれだから、大潮の時はどれほどのものだろう。
周防灘に入ると東から十メートルの風。同時に雨もやって来た。ツーポンリーフして機帆走。まわりには二十隻以上の本船が見える。ほとんどは遠くを走っているので恐怖感はないが、交通量の多さに長崎との大きな違いを感じた。
14時ごろ、またオートヘルムが故障。雨の中、合羽を着て眠気を追い払いながらティラーを握りつづけた。
16時ごろ天気回復、今日の目的地姫島はじめ国東半島もクリアーに見える。
姫島のまわりは刺し網の旗だらけだった。西港に入ってみたが漁船でいっぱいなので南側の姫島港へ回り、18時40分接岸。
フェリー埠頭の東側に空いているスペースがあり、漁船の荷揚げ場になっている部分さえ避ければ泊められる。

朝からパンやハム、バナナくらいしか食べていない。周防灘に入ってからなぜかカツ丼が食べたくなった。幸い港に食堂があるのでさっそく入った。壁にはってあるメニューに「えび○○丼」とあるので、カツ丼に未練はあったが食べてみることにした。
海老と○○(どうしても思い出せない)、プラスタマゴ丼と言えばわかっていただけるだろうか。他に客がいたので、ガツガツ食べないよう注意した。味はまあまあというところ。
港周辺には土産物を売る店や釣具店などもある。八月中旬には「きつね踊り」がおこなわれることで有名な島で、今年は踊りを見に五千人が訪れたそうだ。
関門海峡で迫る本船 関門橋
8月22日 快晴

隣にモーターボートが舫ってある、夜の間に来たらしいが熟睡していてまったく気がつかなかった。
漁協の荷揚げ岸壁に漁船が来て、車海老をおろしていく。島のまわりの刺し網は車海老漁のためらしい。
港のとなりの海水浴場で泳ぐ。朝早いせいか、誰もいない。テトラポットのまわりで久しぶりに素潜りした。泳いだり潜ったりしたあと昼寝すると気持ちいいのだが、このところそんなことをする余裕がない。
九時半出航。南の風、4メートル。今回はじめての向い風、機帆走で国東半島から離れるコースへ。サザエを刺身にして食べる、美味なり。
タックして半島に近づくと漁船が集まって操業している海面がある。大分空港を通りすぎると別府湾だ。佐賀関町の2本の煙突が見えた。高い方は海抜三百メートル以上ある。
目的地の細泊地にあるタンク群が見え始めた。オートヘルムの調子が悪く、ティラーを持っている時間のほうが長い。
風が6メートルまであがるが、予想したとうり泊地に近づくとブランケットに入りセールダウンは楽にできた。

この泊地は水深は浅いが、大潮の時以外は心配ない。県がつくった立派なポンツーンがある。そこにヨットのオーナー達が木製のフィンガーポンツーンをつけて、横付けできるようにした。聞くところによると、融通のきかないお役所を説得するのに、すいぶん苦労されたらしい。もともと放置艇対策でつくられたもので管理人はいないし、水、燃料、電気はない。
しかし、アンカーをうったりせずに楽に泊められるだけでもありがたい。これから伊予灘や豊後水道でクルージングが楽しめる。四国にも行ってみよう。

16時到着。全行程207マイル、平均速度4,8ノット。燃料消費約38リットル。
(ヨット「さらく」はY−30Bi・シングルハンド仕様 2GM搭載)
姫島港 故障したオートヘルムを濡らしたタオルで冷やす
沖合いから見た細泊地 泊地のさらく